このブログは電解水素水を水素水と比較しながらその本質を明らかにしようとする試みです。学術文献は両者併せて200を超えましたが、水素の根本的分子機構は解明されておらず、まだまだ謎が多いというのが一線にいる研究者の実感のようです。とは言え、確実に解明は進んでおり、ブログでも紹介していきます。
まず、電気水素水の活性物質である活性水素の生成について触れます。水の電気分解によって陰極に水素原子が生成され、すぐに2個が結合して水素分子になります。同時に陰極表面から白金ナノ粒子が溶出します。白金ナノ粒子には触媒作用があり、水素分子を活性水素(水素原子)に変えて吸蔵する性質があります。活性水素は活性酸素を除去するので生活習慣病など酸化ストレス関連の病気に効果があるのではないかと推測されます。これが所謂「活性水素説」で、九州大学の白畑教授によって1997年に発表されました。
「活性水素説」のルーツは1932年にノーベル化学賞を受賞したラングミュアの論文にあるようです。この論文は湿った環境で水素ガスをタングステン・フィラメントで熱すると水素(H2)が活性水素(H)に変換されて安定的に存在するというものでした。白畑教授はこの論文からヒントを得て、水の電気分解においても電極板表面に生成される活性水素は電解水中に安定的に存在するのではないかという着想を得たと述べています。
その後、白畑教授の研究グループは電極板から溶出した電解水中の白金の実測に成功し、白金に吸蔵された活性水素が糖尿病動物モデルの酸化ストレスを軽減し、インスリン分泌を刺激して血糖値を下げることを報告しました。活性水素説は実証されたように思えます。電解水素水による動物モデルの酸化ストレス抑制とインスリン分泌は海外の研究グループでも確認されています。
さらに、白畑グループは最近では「活性水素説」を発展させ、水道水中のミネラルイオンが電気分解によってナノ粒子化し、水素を吸蔵するという新説を提唱しました。水道水に含まれるミネラルのナノ粒子も原子状水素(活性水素やヒドリドイオン)の生成触媒であり、キャリアであるという考えです。この理論は原子状水素の生成ベースを拡げるとともに、水の電気分解は電極板表面で生成する水素をカプセル化する技術という新たな視点を提供するものです。

水素のカプセル化は水素を高活性の水素エネルギーに変換し、効率よく体内の標的部位(酸化ストレス部位、ミトコンドリアなど)に到達させるものです。白畑教授と同じくラングミュアにヒントを得て原子状水素をカプセル化したサプリメントを開発したのが米国のP.フラガナン博士です。まだ効果がj十分実証されているとは言えませんが、ORPが示す還元力は非常に強くかつ持続性があり、注目しています。
水素分子はどうでしょうか。2007年に日本医大の大田教授のグループが、活性酸素の中でもヒドロキシラジカル(・OH)だけをスカベンジ(除去)するという「ラジカルスカベンジ説」を提唱して以来、水素分子は理想的な抗酸化剤と考えられてきました。 しかし、名古屋大の大野教授の研究グループからは、水素分子は抗酸化剤というよりはシグナルとしての機能が重要だという考えが提唱されています。シグナル分子はドアをノックするだけという考えで、ノックの音に反応したシグナルの伝達因子が音を増幅しながら細胞内に伝え、生理作用となって表れるというものです。同研究グループは水素分子は酸化ストレスあるいは・OHとは無関係な疾患も改善することを報告し、これらの現象はラジカルスカベンジ説では説明できないことを指摘しました。最近では水素分子のレセプターの部位に関する研究も報告されています。しかしヒトの腸管で毎日大量に発生する水素ガスがどのような作用をしているのか不明で、現段階ではシグナル分子説が有力になっていますが、すべてを説明できているわけではありません。
電解水素水はインスリンを分泌します。何故でしょうか。実はインスリン分泌が電解水素水を水素水とは異にする特徴と考え、本研究ノートの副題は「電解水素水と水素水はちがう!」にしました。電解水素水に含まれる原子状水素がインスリン分泌を刺激すると考えたからです。インスリンを分泌したのは酸化ストレスが除去されたからという意見もありますが、それでは何故、水素分子しか入ってない水素水はインスリン分泌を刺激しないのかが説明できません。水素水が酸化ストレスを軽減する報告は数多くあるからです。
最近、DNAマイクロアレイ分析により電解水素水を摂取したマウス肝組織の遺伝子プロファイルが明らかになり、1200以上の遺伝子発現が同時に影響されていたことが報告されました。酸化還元関連ばかりでなく、様々な代謝関連の遺伝子も含まれていました。このことは電解水素水の作用がまだ知られていないものも含めて多くの可能性を有していることを示しています。
水素学会の創設者で日本ミトコンドリア学会会長でもある日本医大の太田教授から本研究ノートに関して全般的にコメントをいただきました。いくつかの点で考えは異なりましたが、それらは「大田教授のコメント」と「大田教授のコメントに対する意見」として紹介させていただきました。太田教授には深く感謝申し上げます。
堀 仁