(8)水素分子はシグナルか

水素分子の効果 
水素分子も生理作用を生ずる活性物質です。イラストはこれまで報告があった水素の効果の一覧図です。多くの体内器官が水素の影響を受けます。 

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     Free Radical Research September 2010, 44(9) 971-982

抗酸化剤かシグナル分子か
水素は抗酸化剤かシグナルかという問題があります。2007
年に水素分子は・OHを選択的に除去するというラジカルスカベンジ説が発表されて以来、水素分子は抗酸化剤という捉え方が一般的になりました。しかしその後、水素分子はNOなどと同じくシグナル分子だという説が提唱されました。水素分子のシグナルがシグナル伝達因子によって増幅されながら細胞内部に伝えられて生理反応となって表れるというものです。

水素はシグナル分子か
大野教授(名大)
は水素分子が即時性アレルギーを抑制したことを報告し、即時性アレルギーは・OHや酸化ストレスとは無関係なのでラジカルスカベンジ説では説明できないことを指摘しました。
また同グループは最近、マクロファージ細胞のNO発生経路を調べて水素分子を感知する部位をほぼ特定したと報告しました。中尾准教授(ピッツバーグ大)は、マウスの肺移植中に水素ガスを吸引させると肺細胞に抗アポトーシスタンパク質が発現し、炎症が抑制されたことを報告しました。中尾准教授は水素分子がシグナルとして機能したからと考えています。現在では、水素はシグナルだと考える研究者が増えています。抗酸化剤という面もありますが、酸化ストレス低減の重要な要因とは考えられていません(参文3−24、参文3−29、参文3−18)。

腸管水素ガスの不思議
ヒトの腸管では多い場合で1日10リットル以上の水素ガスが発生します。そのうちの21%が血管に吸収され、14%が肺から排出されるという報告があります。その差の7%に相当する数百ミリリットルの水素が体内で消費されているはずですが、臓器炎症や酸化ストレスは抑制されていません。他方、わずか数十ミリリットルの水素を水素水で摂取すると酸化ストレスが抑制されます。なぜ水素水は抑制できて、腸管水素ガスは抑制できないのでしょうか。腸管水素ガスは抗炎症作用があることも動物試験で確認されているだけに不思議です(参文3−22、参文3−30)。

ネイチャー論文はヘン!
ラジカルスカベンジ説はネイチャー・メディスンに発表されましたが、疑問点があります。論文は、脳梗塞の改善は水素が脳の・OHを直接除去して酸化ストレスを下げたからと推測しています。しかし脳の水素濃度が低すぎて・OHを直接除去できるレベルではありません。いますもうひとつの疑問は水素は・OHを選択的に消去したというインビトロの結果をインビボにそのまま当てはめたことです。しかし体内では水素はスーパーオキシドも消去します。SODが関与することでその反応は3000倍にスピードアップされます(「不老革命」吉川教授著)。つまり体内では水素は・OHを選択的に消去するわけではありませんこの論文によって水素は・OHだけを除去する理想的な抗酸化剤だと一般的に信じられるようになってますが、誤りだと思います。(参文3−1)。 
 
                                                                  

▼太田教授のコメント: ◆「脳梗塞を改善したのが、水素が・OHを消去したからだというのは、推測です」、◆「慢性疾患動物モデルに水素水を飲ませたときに現れる効果は、OHラジカルを直接消去した結果だとは私は思っていません。濃度から考えて、別のことを考えなくてはなりません。では、何故かという点については現段階では分かりません」、「(水素の認知機能改善に関しては)継続的に水素に暴露された血液の成分が還元の方に傾き、間接的に脳の酸化ストレス状態に影響するのかもしれません」、「(水素分子は)生体シグナルとして働いている可能性が示唆されており、抗炎症作用や抗アレルギー効果をどのように説明したらよいのか、今後の課題です」、「そもそも触媒というのは、反応を促進させるのですから、触媒や酵素の中では、反応中間体ではあらゆる原子状態をとりえます」、 「同じメカニズムですべてを説明すべきではないと思います」

▲太田教授のコメントに対する意見: 大田教授は、水素は研究するほど謎が深まると述べています。体内水素濃度の低さからラジカルスカベンジ説で慢性疾患の酸化ストレス低減は説明できないと述べ、
最近発表されたレビューでは、水素量と水素の効果は多くの場合無関係のようだと総括しています。水素分子は理想的な抗酸化剤だと発表した当初とは変わってきているようです。水素はひとつの理論では説明できないと考えているようです(参文3−31)。



プロフィール

Author: 堀   仁
米国大学大学院卒(MBA)
外資系金融機関を経て電解水関係の企業へ。
独立し、現在に至る。

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